逍遥記

自由気ままに、好きなことをし、感じたままに綴る、それがこの逍遥記です。

2013年09月07日

ネットの世界とアバタ―
最近気になっているものにコンビニや飲食店で冷凍庫に入ったり、大量のパンの上に乗ったり、裸になったりといった悪ふざけの写真を撮り、さらにそれをネットに投稿するというニュースがあります。
これは単なるいたずらの範囲を超え投稿されたお店は全商品の入れ替えを余儀なくされたに留まらず閉店にまで追い込まれたお店も少なくありません。

しかもこれだけ度々報道されているにも関わらず未だに同じ行為を行う人が多いのには驚かされます。

これまでもパンの中に針を入れるといった類の犯罪はありましたが、これでお店が潰れたという事はなかったと思います。

では何が今回のケースと違うのかと考えると一つは行為に関して罪の意識があるかないかと言う事です。
針刺し事件の場合は明らかに不特定多数に被害を与えるという最初から罪の意識がありますが、今回の場合は特別お店に被害を与えようという意識からではなく、単に面白いからやってみたら結果的に被害が出てしまったという事です。
つまり罪の意識がないからこそ簡単に行ってしまうのです。しかも結果がどのように展開していくのかという発想もないのです。

これを見ていると如何にネットの慣れ親しんだ世代の人であってもまだまだその影響力というものが理解されておらず、自らの行為がネット上でどのように展開し、また現実世界においてどのような影響を及ぼしていくのかという感覚が全く備わっていないのです。
言い方を変えればネットを使いこなしている気がしているが実はネットに翻弄され全くコントロールが出来ていないと言えます。

また現実の三次元の世界とネットの二次元の世界(四次元の方が近いかもしれませんが・・・)との区別と関係性がごちゃごちゃになっているとも言えます。

現代の人は現実世界にいる自分とネット世界にいる自分(アバタ―)という二人の自分を演じる必要があり現実世界の自分が行えないような事がネット世界のアバタ―では何でも行えるのではないかと錯覚を起こしているのではないでしょうか?

例えば現実世界では面と向かって悪口を言えない相手であってもネット世界のアバタ―では簡単に悪口が言え、現実世界の自分ではありえない強い自分がそこにいると勘違いしてしまっています。
しまいにはアバタ―=現実の自分となってしまっている人さえいます。
今回コンビニや飲食店に被害をもたらした人たちというのは現実の自分が知らず知らずにアバタ―に乗っ取られた人たちではないでしょうか?

いずれにせよ今後ネットの世界が拡大していくのは必至で現代人は現実世界とネット世界という二つの世界を生きていかなければならなくなると思います。

2013年09月18日

バランスの取り方
先日は久々にお遍路に行ってきましたがそちらはブログに任せるとして今回は先日テレビで放送されたミツバチと農薬の話について書こうと思います。

今回のテレビの内容はEUで予防原則に基づいてネオニコチノイド系農薬の使用を禁止した事に関し、日本ではどのように対応していくのかという問題についてでした。

番組ではネオニコチノイド系農薬の影響を示す研究データが出ている事に触れている反面、ネオニコチノイド系農薬がなければ農業が立ち行かなくなる危険性もあると指摘、さらには養蜂と受粉の現状と農薬との関係性など様々な視点から農薬問題を説明していました。

EUで使用禁止となった農薬が日本では関係性がまだハッキリしないという理由からなんの規制もなく使用されている中で長崎県が全国で唯一農業者と養蜂業者、さらに行政が関わり、ミツバチ連絡協議会を設置しお互いに連携を図っていくという事例を紹介していました。

これは元々は久志先生が作られたものと言ってよく、農薬使用の禁止の前段階としてできたものなのですがテレビではいかにもこれで長崎県の養蜂と農業は上手くいっているかのような話になっていました。
まぁこの点においては仕方がないにしても気になった事が他にもいくつかありました。

まず一つ目はネオニコチノイド系農薬のミツバチに対する影響が因果関係がハッキリしないとしている点です。
番組内でちゃんと致死量に至らない極々微量の農薬でもミツバチの方向感覚を狂わせ帰巣できなくするというデータを紹介しながらも因果関係がハッキリしないというのです。

これはあくまで個人的な考えですがおそらく農薬メーカーの毒性試験は致死量の試験がメインで中長期的な影響の試験はほとんどされていないのではないかと思います。
また試験においては、たとえ方向感覚がなくなろうと死ぬわけではない為影響なし、とされるのではないかと思います。
しかし現実ではもし方向感覚がなくなればミツバチは巣に戻れず餓死する他ないのですが・・・。

農薬の毒性試験がどのように行われるのかは知りませんが、医薬品のデータから考えるとおそらく都合のよいデータを作り出しているのだと思います。
メーカーからすれば巨額の費用を投じて開発して農薬が販売できなければそれまでの研究費は全て水の泡と化してしまいます。それを恐れるあまり、自分たちにとって都合の良いデータが出るように試験を行い、データ解析をしているのだと思います。
まぁこれには多くの反論があろうかと思いますが実際に医薬品でもメーカーの説明会で言われるのは決まって自分たちの会社の医薬品が他社よりもいかに優れているかというデータであり、同じ薬効の薬でも各社それぞれが自社の製品が一番であると説明されます。
何が言いたいかというとデータは作れるという事です。これはわざわざ狙ったデータを出す事もあれば知らず知らずにそうしているケースもあります。

例えばある薬の吸収速度が速いとするとこの薬は即効性がありますとなり、吸収が遅ければ長時間作用しますとなります。また中間であれば急激な血中濃度の上昇がない分副作用のリスクが低く、ある程度の時間作用しますという具合に説明する事もできます。
つまりどの視点から見るかによってどうにでも解釈できてしまうのです。

これは農薬の場合でも同じでネオニコチノイド系農薬の場合は水溶性で直接植物内に吸収されるため低濃度でも効果を発揮しさらに長期間にわたって効果が持続するため農家が農薬代として支払うお金が少なくて済むというまさに魔法の農薬というのです。
しかしこれも別の味方をすれば植物内に入り込んだ農薬は洗い流すことができないばかりか、低濃度で効果があるというのは毒性が非常に高い事を意味し、長期間作用するのも長期間にわたり毒性を発揮するとも言えるのです。

よく患者さんに、私は小さい軽い薬しか飲んでいないから大丈夫とか、こんな大きな薬がでるなんてひどい症状なんだろうという人がいますが、少し考えればわかる事ですが小さいもので効果が出るというのはそれだけ効果が強い物質ですし、大きくないと効果が得られないものはそれだけ作用が弱いのです。

少し話がそれてしまいましたが、これだけミツバチに対する毒性が示されEUで使用禁止になったものを日本では未だに因果関係が不明だという理由で使い続けている事にさも正当性があるかのような報道の仕方はいかがなものかと思います。

もちろん政府の決定がこうなっている以上勝手な見解はできないのでしょうが普段あれだけ政治家の不祥事や政治の不正不満を報道しているマスコミがこと農薬問題となると踏み込んだ報道ができないというのは怒りを覚えます。

それと最も違和感を感じたのは最後のまとめてとしてミツバチへの影響を考えた予防的原則と農薬の使用禁止による農業への影響とその経済的損失とのバランスを考えてこの問題に取り組まなければなりませんというよな内容で締め括られていた事です。
これではそもそもの予防的原則の意味がない事になってしまうのはもちろん、ミツバチが死ぬ事と経済的損失という命とお金を天秤にかけてバランスを取ろうとしている点に恐ろしさを感じるのです。

たかが昆虫の一種が滅びようとも人間には全く関係がないかのような判断と言わざるを得ません。
番組では放送されていませんでしたがネオニコチノイド系農薬の人体への影響を示すデータもあるほか、ミツバチが滅びればこの世界は花の咲かない実のならない世界となり食糧危機、ひいては農業など成り立たなくなってしまうにも関わらず今の日本では予防原則が守られていないのです。

このバランスの取り方というのは今の世の中を非常によく表していると感じます。命と引き換えにお金を得ようとするこのバランスの取り方はまさに命綱なしに行う綱渡りをしている状態だと思います。

原発問題でも同じで、人の命を危険にさらす事よりも経済を優先させるという政府の判断はまさにこのバランスの取り方にあると思います。
一方で命が最も大切だなどと言っておきながらもう一方では命よりもお金(経済)を優先する世の中になりつつある事にもっと危機感を持たないといけないと思います。

それともう一つ言い忘れていましたがネオニコチノイド系農薬の影響がミツバチにしかないかのような放送のされ方でしたが、もし久志先生が取材を受けていたならばきっと他の昆虫や鳥類等への影響を語ってくれたと思います。
直接人に関わるミツバチだけがクローズアップされていますが本当に問題なのは全ての生き物に対して影響があるという事です。その事には一切触れていなかった今回の放送にはガッカリさせられました。
その中で唯一の収穫を挙げるとすれば、全国放送でネオニコチノイド系農薬の問題について触れたという事だと思います。
まずは多くの人にこの問題を考える機会を与えてくれたという点だけにおいては一歩前進と言えるのかもしれません。

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